【簡単成形】おうち陶芸は型を使おう!初心者向けのお皿・小鉢作り
自宅で過ごす時間が増え、「何か新しい趣味を始めたい」「無心になれる時間が欲しい」とお考えの方にとって、「おうち陶芸」はとても魅力的な選択肢の一つでしょう。土に触れ、自分の手で形作る時間は、日常の喧騒を忘れさせてくれる特別なひとときとなります。
しかし、陶芸と聞くと、「難しそう」「形を作るのが大変そう」といったイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。特に、初めて挑戦される場合は、何から始めればよいか、上手にできるかといった不安があることも理解できます。
ご安心ください。おうち陶芸では、高度な技術がなくても、素敵な作品を比較的簡単に作れる方法があります。その一つが、「型」を使った成形方法です。今回は、この「型を使った陶芸」に焦点を当て、初心者の方が自宅で手軽にお皿や小鉢を作る方法をご紹介いたします。
なぜ型を使うのが初心者におすすめなのか
手びねりや紐作りなど、様々な成形方法がある陶芸ですが、なぜ型を使う方法が初心者の方に特におすすめなのでしょうか。
最大の理由は、安定した形を作りやすいという点です。型を使うことで、器の縁や底のラインを均一にしたり、全体の歪みを少なくしたりすることができます。これにより、「思った形にならない」「形が崩れてしまう」といった、初心者がつまずきがちなポイントを避けやすくなります。
また、型を使えば、手で一から形を作るよりも短時間で成形できる場合が多く、気軽に作品作りを始められます。複雑な形に挑戦する前に、まずは型を使って基本的な形を作ることから始めることで、陶芸の楽しさを無理なく体験できるでしょう。
型を使ったお皿・小鉢作りの基本ステップ
型を使った成形方法の中でも、お皿や小鉢は比較的簡単で、普段使いにもぴったりです。ここでは、一般的な手順をご紹介します。
1. 粘土の準備
まずは、おうち陶芸に適した粘土を用意します。初心者の方は、扱いやすくひび割れしにくい「半磁器土」や「赤土」「白土」などがおすすめです。粘土は使う前にしっかりとこねて、内部の空気を抜き、均一な固さにします。本格的な菊練りまでは必要ありませんが、しっかりと混ぜ合わせるイメージです。
2. 粘土を伸ばす(たたら作り)
次に、粘土を一定の厚さに伸ばします。この工程は「たたら作り」の応用です。
- 作業台の上に粘土を置き、麺棒や専用のたたら板(厚みを均一にするための板)を使って、作りたい器の厚さになるまで均等に伸ばします。一般的に、お皿や小鉢の場合は5mm〜1cm程度の厚さが扱いやすいでしょう。
- 粘土が作業台にくっつかないように、布や新聞紙、ラップなどを敷いておくと便利です。
3. 型に合わせて粘土をカットする
伸ばした粘土から、型に沿わせるための粘土の塊を切り出します。
- 作りたい器の大きさより一回り大きく、伸ばした粘土の上に型紙などを置いて、ヘラやカッターを使って切り出します。型紙は新聞紙や厚紙などで簡単に作れます。
4. 型に沿わせて形を作る
いよいよ型を使って形を成形します。
- 用意した型の上に、切り出した粘土をそっと載せます。型はおうちにあるボウルやお皿、プラスチック容器など、底が丸いものや平らなものなど、様々なものが使えます。型の上にラップなどを敷いておくと、粘土がくっつきにくくなります。
- 粘土が型のカーブに沿うように、指の腹や柔らかいスポンジなどで優しく押し付けながら形を整えていきます。このとき、粘土が薄くなりすぎたり、シワが入ったりしないように注意しましょう。型を逆さまにして粘土を被せる方法(外型を使う)と、型の中に粘土を敷き詰める方法(内型を使う)があります。作りたい形や型の種類に合わせて選びましょう。
5. 余分な粘土を取り除く
型からはみ出した余分な粘土を、ヘラやカッターを使って丁寧に切り取ります。縁を滑らかに整えましょう。
6. 高台をつける(必要な場合)
お皿や小鉢によっては、底に「高台(こうだい)」という輪状の支えをつけます。これにより、器が安定し、焼成時の変形も防ぎやすくなります。
- 高台用の粘土を細長く伸ばしたり、たたら作りで板状にしたものを切り出したりして用意します。
- 器の底になる部分に、高台を取り付ける位置の印をつけ、粘土がくっつきやすくなるように水や「どべ」(粘土を溶かした泥状のもの)を塗ります。
- 高台用の粘土を貼り付け、指やヘラでしっかりと器本体になじませます。隙間ができないように丁寧に作業することが大切です。
7. 乾燥させる
形が整ったら、作品をしっかりと乾燥させます。急激に乾燥させるとひび割れの原因となるため、直射日光や暖房の風が当たらない、風通しの良い場所でゆっくりと時間をかけて乾燥させましょう。作品の大きさや厚さにもよりますが、数日から1週間程度が目安です。完全に乾燥すると、粘土の色が薄くなり、固くなります。
8. 焼成する
乾燥が終わったら、作品を焼成して強度を持たせます。自宅に焼成設備がない場合は、陶芸教室の焼成サービスや、作品を持ち込み可能な窯元、オンラインの焼成サービスなどを利用するのが一般的です。
どんなものを型に使える?
おうち陶芸で型として使えるものは、専用のものだけでなく、身近なものがたくさんあります。
- 食器: ボウル、お椀、スープカップ、大きめのお皿など、様々なサイズや形の食器が内型・外型として活用できます。
- キッチン用品: プリンカップ、ゼリー型、タッパー、鍋など、底の形が滑らかなものが使えます。
- その他: 厚紙を組み立ててオリジナルの型を作ることも可能です。円柱状や四角い型など、工夫次第で様々な形に挑戦できます。
大切なのは、粘土がくっつきにくい素材であるか、またはラップなどを敷いて対応できるか、そして粘土を押し付けたときに形が崩れないある程度の強度があるか、という点です。
最低限必要な道具と費用感
型を使ったお皿・小鉢作りに最低限必要な道具は、以下の通りです。
- 粘土: 1kgあたり数百円〜1,500円程度。最初は1kg程度から始めてみましょう。
- 型: 自宅にあるもので代用可能です。
- めん棒またはたたら板: 自宅のめん棒や、厚みが均一になる板(割り箸など)で代用できます。
- ヘラ: 木製やプラスチック製のもの。粘土をカットしたり、なじませたりするのに使います。100円ショップでも購入可能な場合があります。
- カッター: 粘土を切り出す際に使用します。
- スポンジ: 形を整えたり、表面を滑らかにしたりするのに使います。
- バケツや容器: 水を入れたり、道具を洗ったりするのに使います。
これらの道具は、スターターキットとしてセットで販売されているものもあり、数千円程度で購入できます。また、100円ショップで代用できるものも多く、初期費用を抑えることも可能です。
焼成費用は、利用するサービスや作品の大きさによって異なりますが、小さな作品であれば一つあたり数百円から利用できる場合があります。
不安を解消して、まずは気軽に試してみましょう
「自宅に十分なスペースがない」「汚れるのが心配」という方もいらっしゃるかもしれません。作業する際は、大きめのレジャーシートやビニールシートを床やテーブルに敷けば、汚れを気にせず作業できます。また、小さな作品から始めれば、それほど広いスペースは必要ありません。使った道具や場所は、水拭きなどで比較的きれいにできます。
もし、形がうまく作れなかったり、乾燥中にひび割れてしまったりしても、それは陶芸のプロセスの一つです。失敗を恐れずに、まずは気軽に粘土に触れてみましょう。型を使うことで、最初のハードルはぐっと下がります。
おうち陶芸は、自分のペースで、好きな時間に没頭できる素晴らしい趣味です。型を使った成形は、初心者の方が「できた!」という達成感を味わいやすく、次の作品への意欲につながるはずです。ぜひ、この記事を参考に、自宅での陶芸に一歩踏み出してみてください。