【初心者向け】おうち陶芸 作品をもっと魅力的に!簡単な「絵付け」の方法と道具
自宅で陶芸作品に彩りを添える「絵付け」のススメ
自宅で陶芸を始める方が増えています。粘土をこねて形を作るだけでも十分に楽しいものですが、そこに色や模様を加える「絵付け」をプラスすると、作品の魅力はさらに広がります。
「絵付け」と聞くと、難しそう、プロの技が必要なのでは、と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、絵付けには初心者の方でも気軽に楽しめる方法がたくさんあります。少しの工夫で、あなたの作品に個性と温かみを加えることができるのです。
このページでは、おうち陶芸で作った作品をもっと素敵にするための、初心者向けの簡単な絵付け方法や、必要な道具、絵の具の選び方についてご紹介いたします。ぜひ、あなたの作品にオリジナルの彩りを加えてみてください。
絵付けを始める前に知っておきたいこと
絵付けの方法は、作品がどの段階にあるかによって変わってきます。一般的な陶芸作品の絵付けには、主に以下の段階があります。
- 乾燥中の作品への絵付け: 粘土が完全に乾燥する前の、まだ少し湿り気のある状態(生乾き)や、完全に乾燥した状態(生掛け)で行う絵付けです。主に化粧土や、特定の絵の具を使用します。
- 素焼き後の作品への絵付け: 一度低温で焼成(素焼き)した作品に行う絵付けです。この段階の作品は吸水性があるため、絵の具がしっかりと定着します。陶芸用の絵の具や釉薬を使った絵付けはこの段階で行うことが多いです。
- 本焼き後の作品への絵付け: 本焼成が終わった、完成した陶磁器に行う絵付けです。陶磁器用絵の具やポスカのようなマーカーなど、焼成が不要、あるいは低温短時間で焼成できるものを使用します。ご家庭のオーブンで焼成できる絵の具もあります。
おうち陶芸で手軽に始めるなら、粘土で形を作って乾燥させた後、オーブン陶土用の絵の具で絵付けをする方法や、素焼き済みの器を用意して陶芸用絵の具で絵付けをし、再度焼成してもらう方法、あるいは本焼き済みの器に家庭で焼成できる絵の具で絵付けをする方法などがあります。
今回は、自宅で手軽にできる、乾燥後の作品への絵付けと、本焼き後の作品への絵付けを中心に解説していきます。
初心者でも簡単!具体的な絵付けの方法
複雑な絵を描かなくても、ちょっとした工夫で素敵な作品に仕上がります。
1. 簡単な線や点の模様を描く
一番手軽なのは、筆を使って線や点を描く方法です。 * 点描: ポンポンと点を打ち続けるだけで、可愛らしい水玉模様や抽象的な模様になります。筆の先だけでなく、綿棒や竹串など、先端が丸いものを使っても面白い表現ができます。 * 線描き: ストライプやチェック、あるいはランダムな線を描くだけでも表情が変わります。筆の運び方で線の太さを変えたり、複数の色を使ったりするとより豊かになります。 * フリーハンドのイラスト: 上手に描こうと思わず、好きなものを気楽に描いてみましょう。動物や植物の簡単なシルエット、家や風景など、自由な発想で筆を動かすのが楽しい時間です。
2. スタンプや型紙を活用する
絵を描くのが苦手でも大丈夫です。身近なものや市販のアイテムを使って、模様を転写したり型抜きしたりできます。
- スタンプ: 陶芸用のスタンプや、消しゴムスタンプ、あるいは野菜の切り口(オクラやレンコンなど)をスタンプとして使うこともできます。絵の具を少量つけて、作品に押し当てれば簡単に模様がつけられます。
- 型紙(ステンシル): 薄い紙やプラスチック板で好きな形を切り抜き、それを作品に当てて上から絵の具を塗ります。型紙を剥がすと、きれいに形が抜けた模様が現れます。簡単な図形やアルファベットなどを利用してみましょう。マスキングテープで模様を作ることも可能です。
3. 焼成前と焼成後の絵付けの違いを楽しむ
- 焼成前の絵付け: 主に粘土用の絵の具や化粧土を使います。焼成することで色が定着し、陶器本来の風合いに馴染みます。水彩絵の具のように薄めて使うことが多く、重ね塗りで色の深みを出すこともできます。完全に乾燥させた作品に行います。
- 焼成後の絵付け: 完成した陶磁器用の絵の具を使います。こちらは水に強く、家庭用オーブンで焼成できるものもあります。鮮やかな発色のものや、ガラスのような光沢が出るものなど種類も豊富です。失敗しても焼き付ける前なら拭き取れる場合もあります。手軽に始めやすい方法です。
絵付けに必要な道具と選び方
絵付けのために特別高価な道具を揃える必要はありません。最低限これだけあれば始められます。
1. 筆
絵の具を塗ったり、線を描いたりするのに使います。 * 選び方: 用途に合わせて数種類あると便利です。 * 細い線を描くための細筆(面相筆など) * 広い面を塗るための平筆や丸筆 * 点の模様を描くための丸筆やポンポン筆 初心者の方は、細筆と中くらいの丸筆または平筆を一本ずつ用意してみると良いでしょう。文房具店などで手軽に入手できる水彩絵の具用の筆でも代用できます。
2. 絵の具
どの段階の作品に絵付けをするかによって選ぶ絵の具が変わります。 * 焼成前(乾燥後)用: 陶芸用顔料や化粧土などがあります。少量から購入できるものもあります。 * 焼成後(完成品)用: 陶磁器用絵の具、オーブン陶土用の絵の具などがあります。近年は家庭用オーブンで手軽に焼き付けられるタイプも多く販売されています。最初はセットになっているものを選ぶと、基本的な色が揃っていて便利です。 * 選び方: * 手軽さ重視なら: 家庭用オーブンで焼成できる陶磁器用絵の具やオーブン陶土用の絵の具がおすすめです。焼成施設に依頼する手間なく、自宅で完結できます。 * 本格的な風合いを目指すなら: 陶芸用顔料などを使い、素焼き後に絵付けをして専門の窯で本焼成してもらう方法になります。
3. パレットと筆洗
絵の具を溶いたり、筆を洗ったりするのに必要です。 * パレット: 絵の具を少量出すためのものです。お皿や牛乳パックの底など、身近なもので代用可能です。陶器のパレットは洗いやすく便利です。 * 筆洗: 筆についた絵の具を洗い落とすための容器です。水を入れた空き容器やバケツなどで十分です。絵の具によっては沈殿しやすいものもあるため、複数用意しておくと便利です。
あると便利なもの
- 鉛筆、消しゴム: 焼成前の作品に薄く下書きをする際に使います。鉛筆の線は焼成で消えます。
- マスキングテープ: ストライプなどの直線的な模様を作るのに役立ちます。
- デザインカッター、定規: 型紙を作る場合に便利です。
- スポンジ: 広い面に色を塗る場合や、グラデーションをつける場合に便利です。
- ティッシュペーパー、布: 筆を拭いたり、失敗した部分を修正したりするのに使います。
自宅での作業スペースと注意点
絵付け作業は、粘土を使った成形作業ほど場所を取りません。テーブルの上など、絵の具がついても大丈夫なように新聞紙やビニールシートを敷けば十分なスペースを確保できます。換気をしながら作業することをおすすめします。
- 注意点:
- 使用する絵の具の種類によって、水で薄めるか専用の溶剤を使うかが異なります。必ず商品の説明書を確認してください。
- 焼成が必要な絵の具の場合、指定された温度や時間で適切に焼成しないと、色が出なかったり定着しなかったりします。
- 特に食用にする器の場合、口が触れる部分への絵付けに使用できる絵の具か確認が必要です。食品衛生法に適合した絵の具を選びましょう。焼成後の絵の具は口が触れる部分への使用を避ける方が安心な場合が多いです。
絵付けで作品に命を吹き込む
絵付けは、あなたが作った作品にオリジナルの個性を加える最後の仕上げであり、創造性をさらに発揮できる楽しい工程です。上手に描こうと気負わず、自由に筆を動かし、色の組み合わせを楽しんでみてください。簡単な模様から始めて、徐々に色々な表現に挑戦していくのも良いでしょう。
絵付けをすることで、既製品にはない、あなただけの特別な作品が生まれます。世界に一つだけの器やオブジェに、ぜひあなたの感性を加えてみてください。完成した作品を眺めるたびに、きっと愛着が深まるはずです。失敗を恐れず、絵付けの時間を楽しんでみてください。