【次のステップへ】おうち陶芸で作品をより美しく!乾燥前の「削り」と「磨き」の基本
おうち陶芸、形作りが終わったら次に進みましょう
自宅で気軽に陶芸を楽しむ「おうち陶芸」。粘土と向き合い、無心になって作品の形を作る時間は、日常から離れて心を整える素晴らしいひとときですね。
手びねりやたたら作りなどで器や小物など、思い思いの形が完成したら、いよいよ次のステップです。作品を乾燥させて焼成へと進む前に、より完成度を高めるための大切な工程があります。それが「削り」と「磨き」です。
この「削り」と「磨き」は、作品の印象を大きく左右し、手触りや見た目を洗練させるための重要な作業です。初心者の方にとっては、「形ができたら終わりじゃないの?」と思われるかもしれませんが、このひと手間を加えることで、ご自身の作品が格段に美しくなります。
この記事では、おうち陶芸で形を作った後の「削り」と「磨き」について、その目的から必要な道具、具体的な方法までを初心者向けに分かりやすく解説します。ぜひ、このステップにも挑戦して、あなたの作品をもっと素敵なものにしてみてください。
作品を「削る」とは?なぜこの作業が必要なのでしょうか?
陶芸における「削り」とは、主に作品の底部にある「高台(こうだい)」と呼ばれる部分を作ったり、器の側面や表面に残った凹凸、厚みのばらつきなどを均一に整えたりする作業を指します。
削りの主な目的
- 高台を作る: 器を置いたときに安定させたり、テーブルに直接触れるのを防いだりするための台座を作ります。高台の形や高さによって、器の表情は大きく変わります。
- 厚みを調整する: 作品の厚みが均一でない場合、乾燥や焼成の際にひび割れの原因になることがあります。削りで全体の厚みを整えることで、破損のリスクを減らします。
- 表面を整える: 手びねりなどでできた表面の細かな凹凸や、指の跡などを滑らかにし、より洗練された印象にします。
削り作業を行うのは、作品が完全に乾燥する前の、少し硬くなった状態です。この状態を「革のように硬い」という意味で「革のような状態(かわのようなじょうたい)」と呼ぶことがあります。乾燥しすぎると削りにくく、柔らかすぎると形が崩れてしまうため、適切なタイミングで行うことが大切です。
削り作業に必要な道具
削り作業には、陶芸用の様々な道具が使われます。初心者の方は、まずは基本的なものを揃えることから始めましょう。
- 陶芸用カンナ: 高台を作る際に粘土を削り取るための専門的な道具です。様々な形や刃の角度のものがありますが、まずはシンプルなU字型やV字型のものが使いやすいでしょう。木製の柄に金属の刃がついたものが一般的です。
- ヘラ(木製または金属製): 表面の細かい部分を整えたり、余分な粘土をこそぎ取ったりするのに使います。様々な形状のものがありますが、いくつかあると便利です。
- 回転台(ターンテーブル): 器などを回しながら削る際に非常に役立ちます。手で回せるタイプのもので十分です。均一に削るためにあると便利ですが、必須ではありません。
これらの道具は陶芸用品店やオンラインショップで購入できます。まずはセットになっているものや、少量から試せるものを選ぶのも良いでしょう。
初心者向け!削り作業の基本ステップ
ここでは、簡単な器を例に、削り作業の基本的な流れをご紹介します。
- 作品の乾燥状態を確認する: 作品全体が均一に硬くなり、指で軽く押しても跡がつかない程度の「革のような状態」になっているか確認します。作品の大きさや厚み、環境によって乾燥時間は異なります。
- 作品を固定する: 回転台を使う場合は、作品を回転台の中心に固定します。固定が難しい場合は、作品が動かないように注意しながら作業を行います。
- 高台を作る位置を決める(器の場合): 器の底を上にして置き、高台を作る位置にコンパスやヘラなどで目安となる線を軽く引きます。
- カンナで削り始める: カンナを作品の表面に当て、回転台をゆっくり回しながら、または作品を手で回しながら削り進めます。一度に深く削らず、少しずつ慎重に行うのがコツです。
- 高台を作る場合は、内側の線と外側の線の間の粘土を削り取っていきます。高台の高さや幅は、作品のデザインに合わせて調整します。
- 側面の厚みを調整する場合は、作品を横に倒すなどして、カンナやヘラで削っていきます。
- 表面を整える: カンナやヘラで大きな削りが終わったら、細かい部分をヘラなどで整え、滑らかにしていきます。削りカスをこまめに取り除きながら作業を進めましょう。
- 厚みを確認する: 作品の厚みが均一になっているか、指で触ったり、可能であれば厚み計(専用のものもありますが、竹串などを利用することもあります)で確認します。
削り作業は、最初は難しく感じるかもしれませんが、練習を重ねることで感覚を掴めます。焦らず、作品の状態を見ながらゆっくり進めることが大切です。
作品を「磨く」とは?その効果は?
削り作業で形を整えた後、作品の表面をさらに滑らかにしたり、独特の光沢感を出したりするのが「磨き」の作業です。
磨きの主な目的
- 表面を滑らかにする: 削りや手びねりの際に残った微細な凹凸をなくし、手触りを良くします。
- 質感や光沢を出す: 特に施釉(ゆうやくをかけること)しない部分や、化粧土を施した部分などを磨くことで、粘土本来の滑らかな質感や、磨きによる自然な光沢を引き出すことができます。
- ホコリの付着を防ぐ: 表面が滑らかになることで、乾燥中のホコリの付着を防ぎやすくなります。
磨き作業も、削りと同じく作品が完全に乾燥する前、または種類によっては乾燥後に軽く湿らせてから行います。
磨き作業に必要な道具
磨き作業には、特別な道具だけでなく、身近なものも活用できます。
- 水を含ませたスポンジ: 作品の表面を軽く湿らせたり、広い面を均一に磨いたりするのに使います。絞り具合を調整することで、様々な効果が得られます。
- 柔らかい布: 乾いた布や少し湿らせた布で作品全体を優しく磨きます。
- ヘラ: 固めのヘラで表面をこすることで、より強い光沢を出すことができます(「こすり磨き」と呼ばれる技法です)。
- 河原の石など表面が滑らかなもの: ヘラと同様に、こすり磨きに使うことができます。ご自身の手になじむ滑らかな石を探してみるのも面白いでしょう。
初心者向け!磨き作業の基本ステップ
磨き作業は、どの程度の滑らかさや光沢を出したいかによって方法が変わりますが、ここでは基本的な方法をご紹介します。
- 作品の乾燥状態を確認する: 削り作業の後、さらに少し乾燥が進んだ状態、または種類によっては完全に乾燥した状態で行います。硬すぎず、柔らかすぎない、磨きやすいタイミングを見極めます。
- スポンジで表面を湿らせる: 固く絞ったスポンジで作品全体を優しく撫でるようにして、表面を均一に湿らせます。あまり水分が多いと形が崩れる原因になるので注意が必要です。
- 磨き始める:
- スポンジ磨き: 軽く湿らせた作品の表面を、もう一度固く絞ったスポンジで優しく撫でるように磨きます。表面の細かな凹凸が滑らかになります。
- 布磨き: 乾いた布や少し湿らせた布で、作品全体を丁寧に拭くように磨きます。表面がさらに滑らかになり、わずかな光沢が出ます。
- こすり磨き(より光沢を出したい場合): ヘラや滑らかな石などを使い、作品の表面を軽く圧をかけながら一定方向にこすります。同じ場所を繰り返し丁寧にこすることで、粘土の種類によっては強い光沢が出ます。特に高台の内側など、釉薬をかけない部分に行うことが多いです。
- 乾燥させる: 磨きが終わったら、作品をしっかりと乾燥させます。
磨き作業も、焦らず、作品の状態を見ながら丁寧に行うことが大切です。様々な道具や方法を試して、お好みの質感を見つけてみてください。
削り・磨き作業の注意点
この工程を行う上でいくつか注意しておきたい点があります。
- 乾燥具合の見極め: 削りも磨きも、適切な乾燥状態で行うことが非常に重要です。柔らかすぎると形が崩れ、硬すぎると削りにくかったり磨きにくかったりします。最初は難しく感じるかもしれませんが、何度か試すうちに感覚を掴めるようになります。
- 力の入れすぎに注意: 特に削りの際、一度に大きく削ろうとしたり、強い力を入れすぎたりすると、作品を傷つけたり割ってしまったりする可能性があります。少しずつ、慎重に進めましょう。
- 削りカスの処理: 削り作業では粘土の粉塵が出ます。作業場所が汚れないように新聞紙などを敷き、作業後はウェットティッシュなどで拭き取るなど、周囲への配慮も忘れずに行いましょう。マスクの着用も検討しましょう。
- ホコリ対策: 磨き終わった作品を乾燥させる際、ホコリが付着しないように注意が必要です。乾燥棚を利用したり、通気性の良い布などを軽くかけたりする工夫をしましょう。
削り・磨きは作品に命を吹き込む時間
おうち陶芸で形を作った後の「削り」と「磨き」は、作品の最終的な仕上がりを左右する、非常にやりがいのある工程です。この作業に没頭する時間は、作品がより洗練されていく過程を間近で感じられる、まさに作品に命を吹き込むような時間と言えるでしょう。
「難しそう」「失敗したらどうしよう」とためらう必要はありません。最初はうまくいかなくても大丈夫です。まずは小さな作品で試したり、削りやすいシンプルな形から挑戦したりしてみてください。作業を繰り返すうちに、きっとご自身の作品の変化を楽しめるようになります。
まとめ
この記事では、おうち陶芸における「削り」と「磨き」の基本的な方法について解説しました。
- 「削り」は高台作りや厚み・表面の調整を行い、作品を安定させ、破損を防ぎ、形を整える作業です。
- 「磨き」は表面を滑らかにし、手触りや質感、光沢を出す作業です。
- どちらの作業も、作品が「革のような状態」など、適切な乾燥具合で行うことが大切です。
- 初心者の方は、陶芸用カンナやヘラ、スポンジなど、基本的な道具から揃えてみましょう。
- 焦らず、少しずつ、作品の状態を見ながら丁寧に進めることが成功の鍵です。
形を作る楽しさに加え、削りや磨きを通して作品がどんどん美しくなっていく過程をぜひ体験してみてください。このステップを乗り越えることで、おうち陶芸での作品作りがさらに奥深く、楽しいものになるはずです。
さあ、あなたの作品を次の段階へ進めてみましょう。